2012年9月17日星期一

IMS、高濃度ドーピングで有機太陽電池の逆積層に成功



分子科学研究所(IMS)830日、高濃度ドーピングで有機太陽電池の逆積層に成功したと発表した。同技術を用いると、有機半導体の積層を自由 に構成できる他、電極の種類も選択する幅が広がり、有機太陽電池の設計作製の自由度が格段に向上するという。成果は、同所の平本教授、久保雅之CREST 研究員らによるもので、詳細は「APEX(Applied Physics Express)」に掲載される。
有機太陽電池は、合成が可能な有機半導体を用いたデバイスとして、低コストで、軽く、フレキシブルで、生活に溶け込んだ多彩なカラーやデザインの シートが35年程度で商品化され、架台のような重い構造を必要とせず、屋根や壁、窓、自動車、ありとあらゆる場所に簡単に印刷、貼り付け、ラッピング、 塗布して、身近な社会全体に普及することが期待されている。
このような長所をもった有機太陽電池は、エネルギー問題解決の一翼を担うべく、次世代の太陽電池として産業的な応用が進みつつある。すでに実用化さ れている無機系のシリコン太陽電池では、確立された半導体物性物理学に基づいた明瞭なエネルギー設計によって、所望の性能の太陽電池セルを作製できる。し かし、有機太陽電池については、有機半導体物性物理学の基礎科学的な研究の蓄積が不十分とされている。特に、セル性能を設計して望み通りに製造するために は、有機太陽電池の電圧を生み出す起源(内蔵電界)に関する、有機半導体物性物理学(バンドギャップサイエンス)の研究が不可欠である。
研究グループでは、有機太陽電池についても、無機太陽電池のように、"バンドギャップサイエンス"を確立させたいという構想の下、これまでに有機半 導体では未開拓の領域であったドーピングによるpn制御技術に取り組み、20113月には、代表的なn型半導体であるフラーレン(C60)モリブデン酸化物(MoO3)を共蒸着によりドープし、p型になることを示していた。
その後、フラーレン(C60)へカルシウム(Ca)を同様に共蒸着し、意図的にn型にすることで、単一の有機半導体としてフラーレン分子(C60 ) の単独薄膜の中に、pnホモ接合を形成し、太陽電池として動作させることにも成功しているが、これは有機太陽電池も無機系太陽電池と同様に、フェルミレベ ルの自由なコントロールが可能なこと、つまり、エネルギー設計によって性能を予測し、所望の性能のセルを自由自在に作れることが示されたものであった。
さらに、3つの異なる物質を同時に蒸着する3元蒸着において、コンピュータを用いて精密に制御することで、ドーピング濃度を100万分の1(ppm)レベルで自在に操れる技術を開発。これにより2つの有機半導体が混ざった共蒸着膜中へのドーピングも可能とし、フラーレン(C60)以外にも代表的なp型半導体であるメタルフリーフタロシアニン(H2Pc)pn制御、pnホモ接合の形成にも成功していた。現在ではその他の有機太陽電池の主要な材料に対しても、同技術を用いることで、ドーピングによるpn制御が可能であることがわかっている。
上述のようにこれまでの研究では、有機半導体に微量のドーピングをすることで、精密なpn制御を行ってきたが、今回は、あえて数%(数万ppm)オーダーの高濃度のドーピング(ハイドーピング)を有機半導体へ行うことで、無機半導体におけるp+-もしくはn+-ドー プのようなハイドープ層(プラスはハイドープされた領域であることを示す)を作り、有機太陽電池の有機半導体/金属電極界面へ挿入した。これは、ハイドー プにより、界面近傍のエネルギーを局所的に動かすことで、光によって発生した電流(光電流)の取り出し時に抵抗となる障壁の厚さを極限まで薄くし、電荷 キャリアの障壁のすり抜け(トンネル効果)を起こし、有機半導体/金属電極界面をオーミック化できることを期待してのことという。トンネリングは界面間の エネルギーの差に、ほとんど関係なく起こるので、有機半導体/金属電極界面をオーミック化できると、どんな種類の金属も電極に使用することができるように なる。つまり、有機太陽電池のセル構成や使用する電極をわざわざ変えなくても、そのまま有機半導体の積層順を逆にした構成のセルが作製可能ということにな る。これにより、有機太陽電池の設計の自由度を格段に向上し、効率向上の基礎技術となるとしている。
研究グループでは、これまでの研究成果の蓄積に基づき、有機半導体へ一般的によく用いられる物質をハイドープした結果、有機半導体/金属電極界面を オーミック化することに成功。ハイドーピングは真空蒸着装置において共蒸着によって行った。また、アクセプター性ドーパントとして酸化モリブデン(MoO3)を、ドナー性ドーパントとして炭酸セシウム(Cs2CO3)を、蒸着速度を変化させ、それぞれ5%(5ppm)1%(1ppm)ハイドープした。

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