米国はまた中国をWTOに訴えた。今回は、中国がレアメタルの輸出割当を厳格化したことが原因だ。米国は、中国が輸出割当を厳格化することにより、タングステンおよびモリブデンの市場価格が高騰すると主張しており、EUおよび日本も米国の立場を支持している。
15日、中国商務部のシェン・ダニヤン報道官は、貿易の自由を制限するものではなく、レアメタルの生産は環境への悪影響を伴うことから、環境保護の観点から輸出割当を規制するものだと説明している。中国はこのようにして化石資源の保護を目指している。
中国は世界のレアメタル市場の90%を占めており、自らの言い値で販売している。WTOの規定によれば、貿易体制は不平等なものであってはならない。米国
によれば、中国企業はレアメタルに関して外国企業よりも有利な条件で購入しており、特に米国企業は大きな差別を受けているとしている。
ロシアの専門家らは、この問題はWTOの枠内で十分に解決できるものだと考えている。「インヴェストカフェ」のアントン・サフォノフ主任分析員は、中国と米国の間で新しい貿易戦争が起こることはない、と指摘している。
―米国と中国は、すでに長い間対立しています。両国はお互いを非難していますが、何らかの積極的な行動はとっていません。両国は、相手が全体的なルールに違反しているとか、保護主義をとっているとかで批判していますが、それ以上にことが及ぶことはありません。
米国と中国は、お互いにとって大きな貿易経済パートナーだ。それゆえ、その関係をさらに悪化させるようなことには関心がない、とロシア科学アカデミー極東研究所のリュドミーラ・ボニ分析員は指摘している。
―両国はすでに長い間、競争と対立を続けてきましたが、それは上がったり、下がったりしてきました。米国と中国との間で貿易戦争は起こらないと思います。
VOR「ロシアの声」が話を聞いた2人の専門家によれば、今回の場合、米国、EU、日本が中国に対する訴えを起こしたことは、政治的な動機に基づくもので
あり、自国の経済的利益を守ることを目的としている、と指摘されている。しかしレアメタルへのアクセスをめぐる問題は、ますます地政学的な意味づけを持っ てきている。さらにレアメタルは、ハイブリッドカーの生産にも使われる。それゆえ、世界でも最大のレアメタルメーカーBaotou Steel Rare-Earth Groupが生産を中止した際、日本と中国は貿易戦争の瀬戸際まで追い詰められた。中国のレアメタルのうち、90%以上が日本向けだからだ。とはいえ、こ の事件をきっかけに、トヨタはレアメタルを使用しないハイブリッドカーの生産に向けて、より一層大きく動いており、これは日本の輸入依存度を下げることに
なるだろう。