二硫化モリブデンの最大の問題点は,つまるところ固体ということです。というのは後述するとして,問題点のはじめに,天然鉱石であるということと,酸化するということを述べたいと思います。
特徴で述べたように二硫化モリブデンは天然で産出する鉱石そのものであるため,鉱石中の不純物が入り込みます。不純物によって潤滑性が阻害されることがあるため,高純度に精製はしていますが,量産的には限界はあります。その点で純度の上限があるとも言えます。最も精製を繰り返した99.9999%の高純度品というのもあることはあるのですが,産業用の潤滑剤には使用されていません。
さらに天然産品であることの問題として粒径の制限の問題があります。微粒子は粉砕して作るにしても,天然鉱床中に粒径の大きなモリブデナイトがない場合は大粒径の二硫化モリブデンは供給できません。近年大粒径の鉱床が少なくなり,大粒径の二硫化モリブデンが欲しいという要求には応えられないという現状もあります。
次に安定性という点で二硫化モリブデンの酸化という問題があります。二硫化モリブデンは徐々に酸化し三酸化モリブデンと硫黄酸化物に変化します。酸化開始温度は粒径にもよるため明言できませんが300~400℃の間といわれています。
ここで誤解のないようにご注意いただきたいのは,酸化して発生する三酸化モリブデンそのものは酸化鉛に次ぐほど摩擦係数の低い物質であり,酸化することによって潤滑性能をまったく失うわけではないということです。二硫化モリブデンの限界温度=潤滑剤としての使用限界という図式とは限りません。ただし,分解により発生した硫黄ガスが近傍の金属を硫化させる場合があるので,二硫化モリブデンの分解温度以上での使用には部材・用途など注意が必要です。
さて,話は冒頭に戻りますが二硫化モリブデンの最大の欠点はそもそも固体粉末であるということで,固体であるがゆえに摩擦部分への吸着性・保持性は液体に劣ります。そのため摩擦部分にどのような形態で塗布,付着させるかが固体潤滑剤として使用するノウハウとなります。
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